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ピコ太郎のPPAPから学ぶメロディと歌詞の絡ませ方

古坂大魔王扮するピコ太郎さんが、2016年8月25日に動画投稿サイト「Youtube」に投稿した「ペンパイナッポーアッポーペン」通称PPAPが日本のみならず世界中を巻き込んで大流行しました。
今回はそんなPPAPの魅力と、それが教えてくれるメロディと歌詞の絡ませ方を考えてみます。

何がそんなに魅力的なのか

PPAPという歌(?)は、いかにもデジタルなシンセで始まって、1分程度の短い歌で、歌を歌っている部分もほんの僅かです。
伴奏もデジタル音がリズミカルに一定の音を奏でているだけという単純すぎるくらい単純な構成。

そんな動画が世界中で大ブレイクし、再生回数はなんと2億回以上にも及びます。
一見、ただの手抜きじゃないかとも思えるこの音楽がここまで異次元級ヒットを飛ばすと、普段真剣に音楽に打ち込んでいるアーティストからすれば、これ以上ない不条理とも言えます。

しかし、何の理由もなく世界中を巻き込んだヒットになることはあり得ません。
個人的な考えではありますが、この曲(動画)を視聴者が魅力的に感じたのは、短いながらも凝縮された音楽的な造形の深さに加えて、「くだらないけどくすっとなるユニークさ」と「歌詞とメロディの完全な融合」にあると思います。

意味を求めてはならない面白さ

本人が鼻歌まじりに閃いたのか、それとも考え抜いて作ったのかは不明ですが、パイナップルとリンゴにペンを刺すなんてことを普通の人なら思いつきもしません。
しかも刺したからといってどうなるのか、、、アップルペンとパイナップルペンが出来るだけです。
冷静に考えてみると、本当に意味のないくだらない言葉遊びではありますが、それこそがエンターテイメントと言えます。

また、そんな意味のないシュールなノリをさんざん引っ張られると、途中で見ている人も冷静になってしまいますし、短すぎると印象に残りにくく、1分程度という長さはまさしく絶妙です。
おバカなノリのまま楽しめて気持ちよく追われる構成は、非常によく出来ていると関心します。

メロディと歌詞の融和性

そして、そのシュールなノリを気持ちよく見続けさせてくれるのが、メロディと歌詞の驚異的な融和性です。
メロディと歌詞が別々にではなく、完全に一体となって耳に入ってくる心地よさがPPAPを支えているといっても良いほどです。

このPPAPの歌詞がもし、下記のような歌詞だったらいかがでしょうか。
きっと全然頭に入ってこないし、途中で動画再生を止めてしまう人がほとんどでしょう。

大好き!
いつでも 会いたい!
Ah ずっとー

電話を切りたくない
Ah おやすみ

明日も会いたいよ
Ah あなたが好きよ

ポップスの王道とも言える恋愛をテーマに歌詞を書いてみましたが、これでPPAPを歌ってみるとまったくしっくり来ないと思いますし、おそらく動画の低評価が押されること間違いなしです。
メロディと歌詞がぴったり絡み合っていると、メロディ・歌詞のどちらを覚えようとしても自然ともう片方も合わせて頭にイメージが残るため、人々の印象にとても残りやすいのです。

ポイントはイントネーション

歌詞とメロディの融和性を高めるヒントがピコ太郎さんのインタビュー内におけるPPAP誕生の話に示されています。
こちらのインタビューでは、『「PPAP」が生まれた理由は、家の近くで遊んでいる子どもが、パイナップルを「パイナッポー」と流暢な発音で話していたことがきっかけ』と言われています。

「PPAP」はなぜ「パイナップル」?ピコ太郎が秘密を明かす!

内容の真偽はともかくとして、PPAPの歌部分のメロディーというのは、実は英語の発音そのままなのです。
PPAPの歌詞の歌いだしである「I have a Pen」を発音してみてみると、PPAPのメロディに極めて近いイントネーションであることに気がつきます。
言葉のイントネーションというのは、普段私たちの生活の中に根付いているものです。
そのため、イントネーションに合わせたメロディというのは、心にすっと馴染んで入っていくため、印象に非常に残りやすいと言えます。

歌詞とは歌う言葉ということ

上記で示した通り、言葉の響きをそのままメロディーのする、またはメロディーの響きと同じイントネーションの歌詞を作るということを行えば、歌とメロディが綺麗に絡み合い、確かな一体感が生まれます。
歌詞というのは歌う言葉であることを考えれば、言葉の響きとメロディラインは密接な関係にあると言え、それを認識して作曲を行うというのは大切なことだと思います。

一見、バカみたいでくだらないと思われるPPAPですが、そのヒットは決してただの幸運だけで生まれたのではなく、音楽への深い造詣と緻密な進行構成によるものだと感じています。
今回はPPAPを取り上げてみましたが、ヒットしているものには必ず理由があり、その理由を突き詰めてみることで自分の音楽へ嗅覚もより鋭くなっていくのかもしれませんね。



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